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心肺蘇生四方山話

胸骨圧迫によって なぜ血液は心臓から全身に送られるのか

こんにちは。日本医療向上研究所の貞廣です。

心肺蘇生四方山話。
これまで 第一回から第五回にわたり「胸骨圧迫と人工呼吸の最適な比率」「胸骨圧迫はなぜ30回続けるのか」「人工呼吸は なぜ1秒なのか?」「人工呼吸の際に入れる空気(酸素)の量は?」「人工呼吸の際に最も気をつけることは?」といった内容でお伝えしてきました。

前回 第六回は「胸骨圧迫という用語について」。今回も引き続き 胸骨圧迫をテーマにお話させていただきます。

―胸骨圧迫によってなぜ血液は心臓から全身に送られるのか―

これまで医学生や初期研修医に「胸骨圧迫を行うことで なぜ心臓から血液が出ていくのか?」と尋ねると、多くの人が「心臓が押されているから」と答えました。実際には胸骨圧迫時に心臓から血液が全身に送られるメカニズムとして明確な根拠のある原理は解明されていないのですが、現在考えられている理由としては「心臓ポンプ説」と「胸郭ポンプ説」の2つが挙げられます。

「心臓ポンプ説」は、文字通り 心臓が直接押されることによって血液が押し出されるという考え方です。もともと心臓は 胸骨と背骨に挟まれているため、胸骨を圧迫することで背骨との間で押しつぶされることになります。ただ、前回の胸骨圧迫の用語のブログにも記載しましたように、心臓は全体として体のやや左側に位置しており、胸骨圧迫の真下には一部の心臓しかありません。全く押されないとは言いませんが、押す場所としてあまり効率的な場所とは思えないですよね。

もう一つの「胸郭ポンプ説」の方が 今は有力とされています。
胸郭という言葉が少しわかりにくいところがありますが、胸骨と胸椎、そしてこれらをつないでいる十二本の肋骨で骨格が形成され、下は横隔膜、その上は内外の肋間筋などが壁を作っていて、これらが合わさって胸郭という空間を作り出しています。この中に肺や心臓、そして食道や大動脈などが入っています。

胸骨を圧迫することでこの胸郭は大きく変形し、胸郭の中の圧力が上昇します。この上昇した圧力が水風船を押しつぶすようなイメージで(心臓はそんなにペラペラな壁ではありませんが・・・笑)心臓に伝わり、中の血液が押し出されます。この際、普通に考えれば心臓の入口や出口である大動脈からも上下の大静脈からも同じように血液が出ていく気がしますが、静脈はもともと逆流しないための弁が存在しています。このため静脈側には簡単には血液は出ていきません。これに対して動脈側にはそのような機構は存在しないため スムーズに血液が流出する、この結果として 体の方ではたくさん血液が出てきた動脈側と血液が来ていない静脈側の間に圧力の差が生まれて 結果として血液が循環する、という説です。個人的にもこちらの説の方がとても理にかなっていると思います。

現在用いられている心肺蘇生のガイドラインでは、この「胸郭ポンプ説」に基づいて質の高い胸骨圧迫の方法が推奨されています。次回以降はこの質の高い胸骨圧迫について解説していきます。

弊社では、病院 介護施設 クリニック様の看護師様やメディカルスタッフ様向けに、そして看護師様個人向けにも 各種急変対応セミナーを開催しております。

内容は、各現場の環境や状況に合わせて柔軟にアレンジいたしますので、セミナーの開催やご相談などございましたら、お気軽にご連絡をお待ちしております。

株式会社 日本医療向上研究所
代表 / 医師 貞廣 智仁

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