1. HOME
  2. ブログ
  3. 心肺蘇生四方山話
  4. AEDのパッドを貼る際に気を付けること①

BLOG

ブログ

心肺蘇生四方山話

AEDのパッドを貼る際に気を付けること①

こんにちは。日本医療向上研究所の貞廣です。

心肺蘇生四方山話 第十三回のテーマは「AEDのパッドを貼る際に気を付けること①」です。

前回に引き続き AEDについてです。これまで「人工呼吸」「胸骨圧迫」についてのブログも書かせていただいておりますので 合わせてご覧いただけますと幸いです(過去のブログはこちら)。

―AEDのパッドを貼る際に気を付けること①―

AED(自動体外式除細動器;Automated External Defibrillator)
パッドを貼る際に気をつけることは主に5つ

  1. 水に濡れていないか
  2. ネックレスなど金属を身につけていないか
  3. 貼付薬を貼っていないか
  4. 胸毛の上に貼っていないか
  5. パッドをペースメーカーから離して(3cm以上)貼っているか

と言われています。それぞれの理由をしっかり理解しておくと、いざという時に応用を効かせて対応ができるようになります。

前回お伝えしましたように、除細動の際にはかなりのエネルギーの電流が流れますが、正しく電流が流れないと効果が減弱する、もしくはトラブルが起こることになります。これらを避けるために注意すべきことが上の5つであり、もう少し細かい点まで含めて一つ一つ確認していきましょう。

AEDで除細動を行う際には、片方のパッドからもう片方のパッドに向かって電流が流れます。実はこの表現は正確ではなく、AEDはすべて二相性となっており、ただ一方通行に電流が流れる(単相性)のではなく、パッドの間で電流が一往復する(二相性)ため、右や左といってもあまり意味がありません。

パッドには2枚それぞれに体に貼る場所のイラストが書いてあり、その通りに貼ればよいようになっていますが、実際はパッドに書いてあるイラストの場所とそのパッドそのものが一致する必要はなく、もう片方のパッドがその場所に貼られても全く問題はありません。電流が心臓を流れることが重要で、先に右から左へ流れようと、左から右に流れようと効果は同じです。

弊社のセミナーではシナリオ訓練の最中に、パッドを貼り始めてから書いてあるイラストと違う側に貼りそうになって慌ててやり直す受講生がいるのですが、たいした時間ではないとはいえ無駄な動きになってしまっています。

そしてこのパッドを貼る位置はイラストで図示されていますが「なぜそこなのか」を理解しておくことも重要です。どうしても図示された場所に貼ることができない場合(やけどがあってパッドが貼り付かない など)のためにも、他の場所の候補も考えておく必要があるからです。

基本的には2枚のパッドが心臓を挟むようにパッドを貼り、電流を流した際にその電流が心臓を通過する(パッドを直線で結んだ際に心臓が含まれる)ようにします。これを単に電流が通過すると考えるだけでなく、通過する電流がなるべく最大となる(直線上になるべく多くの心臓が含まれる)ように考える必要があります。このように考えると、二つのパッドが近づきすぎ(特に左側胸部のパッドが前胸部にかなり寄ってしまう)てはダメで、この場合は体表だけに電流が集中して流れて心臓にはほとんど流れない、ということが起こります。

心臓をしっかり挟む、という意味では右の側胸部と左の側胸部で心臓を挟む、というパターンも考えられます。ただし、電流が最大となるようにするにはパドル間の距離も重要で、距離が増えると生体の抵抗も増えて除細動の際に実際に流れる電流が少なくなってしまいます(電圧=抵抗x電流、という理科の公式を覚えているでしょうか。AEDの電圧は一定なので、抵抗が増えると電流はその分減ってしまいます)。このため除細動の効果が得られない、ということが起こり得ます。

これらを考慮すると、除細動の際のパドルの位置に最も適しているのが、パドルのイラストにある通り、“右前胸部(右鎖骨下)ー心尖部(左側胸部)”のパターンということになります。そしてこれが使えない場合の次の候補としては、心臓を腹側と背側で挟み込むように、左前胸部(ちょうど心臓の真上あたり)とその背面側に貼るのもよい、とされています。ただし、背面に貼るのは簡単ではなく、胸骨圧迫の中断も起こるので、時間がかかるようなら前述の左右側胸部に貼って心臓を挟むやり方も許容されると思います。

まずは貼る場所の注意点について解説しました。

次回は 一般的な注意点1-5の解説についてお話してまいります。どうぞお楽しみに。

「急変に直面した時 対応が合っていたのかいつも不安になる」「突然の急変対応に ストレスを感じている」「自信がない」…といった不安を解消するための個人用コースです。

こちらのコースは、日頃ほとんど急変対応を行うことのない 初心者レベルの看護師・メディカルスタッフ様向けの内容となっております。
ご自身はもちろん お知り合いやお仲間にもぜひご紹介いただければ幸いです。

また、病院や介護施設での急変対応セミナーの開催も行なっております。
内容は 各現場の環境や状況に合わせて柔軟にアレンジいたしますので、セミナーの開催やご相談などございましたら、お気軽にご連絡をお待ちしております。

株式会社 日本医療向上研究所
代表 / 医師 貞廣 智仁


関連記事