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心肺蘇生四方山話

質の高い胸骨圧迫 その④ー圧迫の解除についてー

こんにちは。日本医療向上研究所の貞廣です。

十回にわたって書かせていただきました心肺蘇生四方山話(過去のブログはこちら)。
第十一回のテーマは「圧迫の解除」についてです。

―質の高い胸骨圧迫 その④ 圧迫の解除について―

実際に胸骨圧迫を行っている際に、皆さんの頭の中では圧迫するたびに心臓からビュン、ビュン、とカラダ中に血液が送りだされている映像がイメージされているかもしれません。

第八回の四方山話では、100回胸骨圧迫を行って、100回心臓から血液が出ていくためには、100回のそれぞれに、押して出ていく血液と同じ量だけ心臓に戻ってきて貯まっている必要がある、ということを説明しました。その意味で、1分あたりの圧迫の回数があまりに増えすぎるとよくない、ということをお伝えしています。

今回のお話はこれにつながっているのですが、胸骨圧迫の際に、その圧迫した力を毎回きちんと戻す(毎回きちんと押す力をゼロにする)とよいということをお話します。

皆さんのいわゆる“血圧”は もちろん人それぞれですが、一般的に正常な値は120mmHg程度でしょうか。これは動脈圧と呼ばれ、心臓から出ていく血液が通る管である“動脈”の中の圧力を表しています。例えば動脈が切れて出血した場合、この圧力がかかっていますから天井近くまで噴き上がる、ということが起こるわけです。

これに対して心臓に戻ってくる血液が通る管である“静脈”の圧力は、心臓近くでは中心静脈圧と呼ばれ、およそ10mmHg程度と、動脈とは異なりかなり低圧です。静脈が切れたとしても、血液はそこから溢れ出る程度で噴き上がることはありません。

この静脈はとても低圧であるため、血管周囲の圧の影響を簡単に受けてしまいます。胸骨圧迫を繰り返している際には、胸郭をしっかりと変形させ→それを元に戻し→またしっかり変形させる、ということを繰り返していますが、この“元に戻す”際に 胸骨圧迫の力が少しでも残っていると、その少しの圧力でも低圧である静脈に影響を与えます。心臓は胸郭の中にありますから、胸郭の中の圧力が上昇していた際には、その分静脈は流れにくくなってしまうわけです。これによって心臓に戻ってくる血液の量が減少してしまい、次の胸骨圧迫で心臓から出ていく血液の量も減ってしまうことになります。このため一回一回の胸骨圧迫ごとにしっかりと圧迫の力を抜く、ゼロに近づける、ということがとても大切です。

とはいえ、これは言うが易く行うは難しで、簡単に実行できることではありません。胸の上に置いた手に全く力を加えず、胸骨圧迫を行う姿勢を維持するためには、ご自身の背中にかなりの負担がかかります。1分間に100回の圧迫を行いながらこの姿勢を保つと、正直なところ長くは保ちません。何も考えずに相手の胸の上に自分の体重の一部を預けてしまうようなことはいけませんが、あまり厳密に考えて胸骨圧迫そのものができなくなってしまったりすると本末転倒ですので、ぜひバランスを考えて対応するようにしてください。

「急変に直面した時 対応が合っていたのかいつも不安になる」「突然の急変対応に ストレスを感じている」「自信がない」…といった不安を解消するための個人用コースです。

第三回は 少し先になりますが以下の日程で開催いたします。
ご自身はもちろん お知り合いやお仲間にもぜひご紹介いただければ幸いです。

また、病院や介護施設での急変対応セミナーの開催も行なっております。
内容は 各現場の環境や状況に合わせて柔軟にアレンジいたしますので、セミナーの開催やご相談などございましたら、お気軽にご連絡をお待ちしております。

株式会社 日本医療向上研究所
代表 / 医師 貞廣 智仁

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