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心肺蘇生四方山話

質の高い胸骨圧迫 その③ー圧迫の部位についてー

こんにちは。日本医療向上研究所の貞廣です。

第十回となりました心肺蘇生四方山話(過去のブログはこちら)。
今回は、「胸骨圧迫の部位」について書かせていただきます。

―質の高い胸骨圧迫 その③ 圧迫の部位について―

最近では救急医療をテーマにしたテレビドラマを多く見かけるようになってきました。

医療監修もしっかり行われているようで、かなりリアルな現場を再現するようになっています。このため、実際にトレーニングを受けたことのない一般の方も「胸骨圧迫ってなんとなくこんな感じだよねー」といった感覚は持っていらっしゃるのではないでしょうか。とはいえ、実際に圧迫をするとなると「どこ押せばいいんだっけ?」ということになってしまいます。圧迫する場所を明確に知っておかないと いざという時には行動できません。

医療関係者の方の多くは、学校での授業なども含めるとこれまでに少なくとも一度は心肺蘇生のトレーニングを受けている方がほとんどだと思います。実は教わった時期によって圧迫部位の説明の仕方は違っていました。

私が医師になった頃は(30年以上前です)、自分の指を右の肋骨弓下(あばら骨の一番下のところ)に沿ってみぞおちに向かって移動させ、真ん中に来たところで反対の指二本をその頭側に当て、さらにその頭側に手のひらを置く(つまりここが圧迫部位)、という作業をしていました。つまりみぞおちを見つけて、そこから二横指分だけ頭側に掌の下端を当てる、ということになります。

その後は、乳頭と乳頭の真ん中、という教え方に変更され、現在では、胸を四角形に見立てて「胸の真ん中に手を置く」という教え方に変わっています。

どんな教え方をするにせよ、解剖学的に圧迫した方がよい場所は一定です。胸骨の下半分のところです。では なぜそこを圧迫するのが適切なのでしょうか?

第七回の四方山話で「心臓ポンプ説」と「胸郭ポンプ説」のお話をしました。胸骨圧迫によって心臓が直接押されて血液が出ていくのではなく、胸郭を変形させることによってその圧力が心臓に伝わり血液が出ていく割合の方が多いのではないか、というお話でした。この胸郭をなるべく大きく、さらにはなるべく合併症を起こさずに変形させるには、この胸骨の下半分という場所が最も適しているのです。これは全身の骨だけの模型(人体骨格模型)を横から見ると理解しやすいかもしれません。(ネットでも見ることができますので探してみてください。)

実際に 胸骨は下に行くほどやや前方に迫り出しています。このため、大きく胸郭を変形させるにはなるべく下方を押すことで効率よく変形させることができます。ただ、胸骨の下端には剣状突起という突起がついており、これを圧迫してしまうと簡単に折れて内側を向いてしまいます。その直下には肝臓があることが多いため、折れたまま胸骨圧迫を続けると肝臓を損傷してしまうことになります。これを避けるために、胸骨の下端を押すのではなく、少し頭側を押した方がよい、ということになり、今の教え方である「胸の真ん中を圧迫する」ということになる訳です。

圧迫部位がこれより頭側にずれた場合には、胸郭を変形させにくくなり圧迫の効果が落ちることが予想されます。左右にずれると簡単に肋骨を折ってしまうことになりますので、これは論外ですね。

以上、胸骨圧迫の適切な部位について解説してみましたが、ご理解いただけましたでしょうか?実際には受講者が真ん中に手を置いているつもりでも実は少しずれている、ということがよくあります。このあたりも実際のコースではしっかりと指導させていただいています。

「急変に直面した時 対応が合っていたのかいつも不安になる」「突然の急変対応に ストレスを感じている」「自信がない」…といった不安を解消するための個人用コースです。

第三回は 少し先になりますが以下の日程で開催いたします。
ご自身はもちろん お知り合いやお仲間にもぜひご紹介いただければ幸いです。

また、急変対応セミナーの開催やご相談などございましたら、お気軽にご連絡をお待ちしております。

株式会社 日本医療向上研究所
代表 / 医師 貞廣 智仁

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