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心肺蘇生四方山話

質の高い胸骨圧迫 その②ー圧迫の深さについてー

こんにちは。日本医療向上研究所の貞廣です。

第九回となりました心肺蘇生四方山話(これまでのブログはこちら)。
今回は、「胸骨圧迫の深さ」について書かせていただきます。

―質の高い胸骨圧迫 その② 圧迫の深さについて―

心肺蘇生の講習会では 必ず蘇生人形が用いられます。相手は人形ですから、なんの気兼ねも要らず好きなように圧迫することができます。そして機種によりますが適切な深さに圧迫すると音が出るようになっていたりして、この場合指導者からは「カチッと音がするまでしっかりと圧迫してください」と言われ、音がしなければ焦ってさらに頑張ることになります。

圧迫の深さについて、心肺蘇生のガイドラインでは「胸が約5cm沈むように圧迫するが、6cmを超えないようにする」という記載になっているのですが、圧迫の度に自分が何cm押しているのか分かる方って、まずいないのではないでしょうか?いざ、というときにはなんとなく見よう見まねでやっている、という方が多い気がします。

人形ではなく人間を相手に実際に数多くの胸骨圧迫を行うと、圧迫の深さはガイドラインの記載のような単純な話ではないということがすぐに分かります。例えば若い成人男性で見た目にもがっちりしている方を胸骨圧迫する場合は(そんなことは起こってほしくないのですがまれに遭遇します)、同じような体型をしていた私自身が満身の力を込めて圧迫してもほとんど沈まない(あくまで印象ですが、少なくとも何cmも沈んでいる気は全くしない)ことが何度もありました。また一方で、高齢で栄養状態も悪くすでにだいぶ弱っていらっしゃる方の場合には、かなり遠慮しながら浅く優しく圧迫を始めても、それほど沈めているわけではないのに簡単に肋骨が折れてしまうということも起こります。

前回のブログに記載した胸郭ポンプ説が正しいとすれば、心臓からしっかりと血液を押し出すには 胸郭をしっかりと変形させる必要があります。このためにも力強い胸骨圧迫が必要です。ただ、あまり強い力では骨、特に肋骨が折れてしまうという問題が発生します。もちろんこちらの処置でケガを負わせるなんて、という問題もありますが、そういう道義上の問題以外に、肋骨が折れてしまうと、胸郭を変形させても胸郭内に圧力が伝わりにくくなってしまう、それによって心臓から出ていく血液の量が減ってしまう、という問題も起こりえます。この意味でも なるべく肋骨を折らないように胸骨圧迫を心掛ける必要があるわけです。

じゃあどうすればいいの!?という悲鳴に近い訴えが聞こえてきそうですが、個人的にはおそらくガイドラインを作成した方々もこれに対して公に明確な答えをしにくいところから、“約5cm”を引っ張り出すしかなかったのではないか・・・と推測しています。

弊社のセミナーでは、このあたりの繊細な問題についても長年の経験を活かしたリアルトークをしています。ぜひ受講をご検討ください。

「急変に直面した時 対応が合っていたのかいつも不安になる」「突然の急変対応に ストレスを感じている」「自信がない」…といった不安を解消するための個人用コースです。

第三回は 少し先になりますが以下の日程で開催いたします。
ご自身はもちろん お知り合いやお仲間にもぜひご紹介いただければ幸いです。

また、急変対応セミナーの開催やご相談などございましたら、お気軽にご連絡をお待ちしております。

株式会社 日本医療向上研究所
代表 / 医師 貞廣 智仁

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