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心肺蘇生四方山話

人工呼吸の際に入れる空気(酸素)の量は?

こんにちは。日本医療向上研究所の貞廣です。

心肺蘇生四方山話。第四回目の本日のテーマは「人工呼吸の際に入れる空気(酸素)の量は?」です。是非ご一読ください。

―人工呼吸の際に入れる空気(酸素)の量は?―

前回、人工呼吸で空気(酸素)を肺に送り込む際、同時に胃にも入ってしまうので、少しでも胃に行かないようにするための方法として、ゆっくり換気することの重要性をお伝えしました。今回は胃に行かないようにするための二つ目の方法、換気の際に送り込む空気を少なくすること(たくさん入れないこと)について 解説したいと思います。
>>第三回のブログ「人工呼吸は なぜ1秒なのか?」

心肺蘇生のガイドラインには人工呼吸の際の注意として、
「過大な換気量は避けること」
「1回の目安は胸の上がりが確認できる程度」

という記載があります。

これは、過大な換気量を避けるために、人工呼吸で空気(酸素)を入れている際に、胸の上がりが少しでも確認できたら それ以上は空気を入れなくてよい、そこでやめるべき、というふうに私は解釈しています。

ただ 残念ながら実際の臨床現場では、バッグバルブマスクを使った人工呼吸が得意な方はとても少なく、人工呼吸の際に「口元のマスクの脇から空気がもれないことに全神経を集中し きちんと胸を上げることで精一杯」「入っている量のことなんて考えていられない」という方が多いのではないでしょうか。

そもそも「胸を上げることすら自信がない」という方もとても多いと思います。腕に自信がある人は、バッグバルブマスクを目一杯握りつけて、胸が“しっかり”上がっている、これを見て“やったぜ!(自分はきちんと換気ができている!)”と思っていたりしていませんか?(笑)

前回までに、人工呼吸で肺にたくさん空気(酸素)を送り込んでも、それを胸骨圧迫で全身に送り出せなければ意味がないだけでなく、その時間を少しでも胸骨圧迫に回した方がよいというお話をしました。

そして 人工呼吸で勢いよく空気(酸素)を送り込んでしまうと、気道(空気の通り道)の圧力が上がってしまって、食道の入り口が開きやすくなり たくさん胃に空気が送られてしまうお話もしました。

たくさん肺に空気(酸素)を送り込んだ場合も同様で、(人工呼吸の1回の換気は1秒と決まっているので)結果として送り込む量が多ければ多いほど 気道の圧力が上昇してしまい、その分 胃にたくさん空気が入っていってしまいます。これは避けなくてはなりません。

では 空気(酸素)を送り込むのをどこでやめればよいのか?
それが「胸の上がりが確認できる」までです。
胸の上がりが確認できたら それ以上はいれてはいけない、ということになります。上がりが確認できているのにさらに入れてしまうのは入れすぎ、ということですね。

では胸の上がりが確認できない場合はどうでしょうか?
この場合は、「少しでも肺に空気(酸素)が入っていっていて それでもまだ胸が上がらない」のか それとも「マスクの保持などがうまくできていなくて全く肺に空気(酸素)が入っていっていない」のか 区別がつきません。

全く入っていないのは困るので、「胸の上がりが確認できる」ことがとても大事になってきます。ご理解いただけましたでしょうか?

病院様や介護施設など医療福祉施設向けの心肺蘇生ベーシックコースや、個人向け心肺蘇生ベーシックコースでは、この人工呼吸についての実技指導にとても力を入れています。特に両手を使いマスク保持をする、“両手EC法”、“母指球法”をマスターしてもらうことで、誰でも簡単に人工呼吸ができるようになります。ご不安がある方は ぜひコース受講をご検討ください。

今月開催いたします「第二回 看護師個人向け 心肺蘇生ベーシック」もご案内させていただきます。

「急変に直面した時 対応が合っていたのかいつも不安になる」「突然の急変対応に ストレスを感じている」「自信がない」…といった不安を解消するための個人用コースです。

第二回は 以下の日程で開催いたします。
ご自身はもちろん お知り合いやお仲間にもぜひご紹介いただければ幸いです。

また、急変対応セミナーの開催やご相談などございましたら、お気軽にご連絡をお待ちしております。

株式会社 日本医療向上研究所
代表 / 医師 貞廣 智仁

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