“いざ”という時に 適切な急変対応を
こんにちは。日本医療向上研究所の貞廣です。
年が明けてから あっという間に1月も半ばにさしかかりました。
新年早々 1月1日の「能登半島地震」では甚大な被害がもたらされ、いまだに多くの方々が避難生活を余儀なくされておられます。亡くなられた方々とそのご遺族に対して深く哀悼の意を表し、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
本年も どうぞよろしくお願いいたします
弊社は 様々な“いざ”という状況に対して、皆様が適切な急変対応ができるよう、地道なセミナー活動を通して世の中に貢献していきたいと考えております。
昨年はまず、病院/施設向けに「心肺蘇生ベーシックコース」を立ち上げ、その後「シナリオ訓練コース」や「指導者養成コース」などを開始しました。
これまでお世話になった地域の病院様で開催させていただき、ありがたいことに大変好評をいただきました。今後は さらにエリアを拡大してご案内していく予定です。
「心肺蘇生ベーシックコース」
個人向けコースもスタート
そして本年は 1月28日(日)を皮切りに、施設単位ではなかなかご参加いただけない方にも 急変対応を習得いただけるよう、個人向けコースも定期的に開始していきます。
心肺蘇生ベーシック個人用コース
日時 : 第1回 2024年1月28日 (日)
13:00 – 16:30 ※12:30-受付
会場 : 医療法人社団晴山会 平山病院 新棟3F
千葉県千葉市花見川区花見川1494-3
お知り合いの方や施設で 弊社のセミナーをご希望される方がいらっしゃいましたらぜひお声がけいただけましたら幸いです。
また 今後こちらのブログでは、心肺蘇生でカギとなるポイントについて、少しずつですがお伝えしていく予定です。是非こちらもお付き合いください。
医療の歴史と変化
心肺蘇生四方山話 第一回
―胸骨圧迫と人工呼吸の最適な比率―
私が医者になったのは 約30年前の1992年です。この1990年代まで BLS(一次救命処置)は、胸骨圧迫(当時は心臓マッサージと呼んでいました)と人工呼吸の比率は 5:1、つまり「イチ、ニ、サン、シー、ゴ」と胸を押したらすかさず1回だけ人工呼吸をする、これを繰り返していました。
当時は AED(自動体外式除細動器)が普及していなかったため、除細動は病院内でしか行われていませんでした。このため、院外(現場)で心拍を再開させよう という感覚はあまりなく、救急隊はBLSを継続しながら とにかく急いで病院に搬送し、そして医師は 心拍を再開させるために少しでも早くアドレナリンを投与しよう、としていました。逆を言えば病院では、アドレナリンを投与する以外に 心拍を再開させる特別な手段が特になかったのです。
そして 今の時代にこの話をするとびっくりされることが多いのですが、アドレナリンをなるべく早く心臓に届けよう ということで、1980年代では前胸部から直接心臓に注射針を刺して(心注と呼んでいました)アドレナリンを投与する方法が普通に行われていました。気胸などの合併症が多いだけで効果がない ということで、やってはならない処置になりましたが、90年代前半ではまだ散見される状況でした。
90年代では 心注はほぼ行われなくなったものの、少しでも早く心臓にアドレナリンを届けるために、蘇生の際はとにかく心臓近くに留置した中心静脈(CV)カテーテルが必要、という考え方が浸透していました。このため 心肺停止の患者さんが病院にたどり着くと、医師はすぐに右鎖骨下を消毒して ブラインドで(当時エコーガイド下というやり方はありませんでした)穿刺し、CVカテーテルを留置することが主な仕事になっていました。
今の蘇生方法と比べると なんだかとんでもないことをやっている、と思われるでしょうが、当時の自分はこれが正しい方法だと信じていましたので、まずCVカテーテルを留置し、その後は ひたすら「イチ、ニ、サン、シー、ゴ」と大きな声を出して蘇生を続けました。(若かったので胸骨圧迫の担当になることが多く・・・)
この後、ガイドライン2000、2005・・・と新しいガイドラインが次々と登場して、今の心肺蘇生法に変化していきます。胸骨圧迫と人工呼吸の比率が 2000年に15:2、2005年には30:2と変化していく中で、「胸骨圧迫やりながら、15回や30回なんていちいち数えていられるか!!!」と思ったのを鮮明に覚えています。
ただ、この蘇生方法の変化を理解することは、蘇生時に行われる処置一つ一つの深い理解に直接つながっていくので、実はとても大切です。
なぜ 胸骨圧迫と人工呼吸の比率は 5:1が 15:2になって、30:2と変化したのでしょうか。
分かりにくいのですべて胸骨圧迫30回に統一すると、30:6だったのが 30:4になって 今は30:2ということですよね。つまり 胸骨圧迫30回に対して、最適な人工呼吸の割合を探していったらどんどん回数が下がっていって、今は2回で十分だと分かった、ということになります。つまり人工呼吸で口から肺に酸素を送るよりも、胸骨圧迫で肺から全身に酸素を届ける方がはるかに難しいのです。
少し長くなりましたが、このように 医療には様々な歴史があり、そしてその変化にも 理由や意味があるのです。
弊社で行っているコースでは 「なぜその手技をそのように行うのか」「なぜその順番なのか」など 一連の手技に込められた理論的背景も解説しながら進めます。
内容についても それぞれの現場や状況に合わせて柔軟にアレンジさせていただいております。
急変対応セミナーの開催、そして個人向けセミナーへのご参加など、是非ご検討いただければと思います。
本日も当ブログを読んでいただき、誠にありがとうございました。
株式会社 日本医療向上研究所
代表 / 医師 貞廣 智仁